相続した家の名義変更

文責:弁護士 小島 隆太郎

最終更新日:2025年02月20日

1 家を相続したときにすること

 家を持っていた方が亡くなり、その家(一戸建てだけでなくマンションや、亡くなった人が共有持分を有する建物も含みます)を相続したとき、その名義を相続した人に変更する必要があります。

 家の名義変更とは、すなわち、その家の登記について所有者欄を亡くなった人(被相続人)からその家を相続した人(相続人)へと替える手続きをいいます。

 この手続きは、その家がある地区を管轄する法務局において、その家を相続した人(あるいは、遺言執行人が選任されていればその人)によって行うことができ、弁護士や司法書士といった専門職に依頼することができます。

 その他にも、家を相続した時には各種届出を行う必要がある場合もありますが、今回は、名義変更のみの説明といたします。

2 いつまでに家の名義変更をしなければならないか

 家を相続した場合、名義変更を行わなければならない期間は法律で定められています。

 すなわち、被相続人所有の家について、自分が相続することを知った日から「3年」以内に行う必要があります。

 この期間の定めは、令和6年4月1日からスタートしておりますが、その日以前に被相続人の家について、自分が相続することを知っていた場合は、「令和9年4月1日」までに、名義変更手続きを行えばよいこととなっています。

 つまり、どれだけ時間が経っていたとしても、相続した建物については名義変更をしなければならない、ということです。

 そうであるとすると、相続登記をしたかどうか分からないような古い土地まであり、自分がそのような手続きをしなければならないか分からないという方もいると思いますが、そのような場合は、自分が家を相続した可能性のある市区町村に問合せを行ったりして調べておくことが重要です。

 この期間までに相続登記を行わない場合は、10万円以下の過料(行政上のペナルティー)に課せられる場合があるので、注意が必要です。

 参考リンク:熊本市・相続により土地・家屋を所有された方は、相続登記をお願いします

3 家の名義変更をしないと問題になること

 相続した家の名義変更をしない場合、2の過料以外にも様々なデメリットがあります。

 

① その家の処分をすることができない可能性がある

 家を相続した後、その家には住まないので、売却を考えることがあると思います。

 このとき、一般的に家の名義が被相続人のままですと売却をすることができないことがあります。

 家は金額の大きい取引であるため、売却の手続前に、今の所有者である相続人に名義変更をすることが求められるということです。

 売却以外にも、家の改修などにおいても、名義変更をしていないと業者が取り扱ってくれない場合もありますので、その家を使用または処分する場合には、名義変更が必要です。

 

② 自分の家だと主張できなくなる可能性がある

 相続登記を行わない間に、共同相続人である別の相続人によって法定相続分を相続したと相続登記を行い、第三者に譲渡した上、その登記を備えてしまったとき、本来その家を相続した人は、自分がその家を相続したと主張することができなくなる場合があります。

 別の相続人がそのような横取りのようなことをするような人でなかったとしても、他の相続人に借金があったときにはその債権者が家の差押えをしてしまうということもあり得ますので、やはり家の名義変更をする必要があるでしょう。

 

③ 将来の相続登記手続きの複雑化

 A名義の家の名義変更を行わないまま、その家を相続した人(B)が亡くなってしまった場合、次にその家を相続するCは、Bだけでなく、Aの相続人を含めた相続登記の手続きをしなければならなくなります。

 つまり、家の相続登記を行わないまま放置してしまうと、相続人を遡って手続きを行う必要があり、手続きに協力してもらわなければならない人がどんどん増えてしまうことになるのです。

 このような事態を防止するためにも、家の相続が行われる度に、しっかりと相続登記を行う必要があります。

4 家の名義変更に必要なもの

① 申請書

 被相続人が誰か、家を相続する人は誰か、どの家を、いつの相続を原因とするのか、登録免許税はいくらかなどを記載します。

 他にも、登録免許税免除措置を利用できる場合は、その根拠法令も申請書に記入する必要があります。

 

② 遺産分割協議書(又は遺言書)

 遺産分割協議を行い、それに基づいて相続登記を行う場合、遺産分割協議書を作成し、押印した実印の印鑑登録証明書を添付します(遺言書があれば、それを添付します)。

 

③ 戸籍等謄本

 原則、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人の戸籍など相続関係が分かる戸籍等謄本が必要となります(相続関係によってさらに必要となる場合があります)。

 これらは、基本的にそれぞれ本籍地の市区町村役場において取得することができます。

 参考リンク:熊本市・戸籍関係証明書を窓口で請求される方へ

 

④ 住民票

 被相続人の最後の住所地が分かる住民票や相続する人の住民票などが必要とされる場合があります。

 こちらも、基本的にそれぞれの住所地の市区町村役場において取得することができます。

 参考リンク:熊本市・住民票関係証明書を窓口で請求される方へ

 

⑤ 固定資産税評価証明書

 亡くなった年のものではなく、申告時の相続した家の固定資産税評価額が分かるものを準備します。

 

⑥ 収入印紙

 登録免許税を納めるための収入印紙です。

 その家の固定資産税評価額を基準に計算します。

 上記の例はあくまで一例で、事情によってはより多くの資料あるいは代替する資料を準備する必要がありますので、自分で手続きを行う前に法務局か専門家にご相談されることをおすすめいたします。

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