遺産分割協議書を作らないとどうなるか

文責:弁護士・税理士 小島 隆太郎

最終更新日:2023年12月05日

1 相続を放棄する場合は不要

 遺産分割協議書は、あくまでも相続財産を引き継ぐ場合に必要になりますので、そもそも相続放棄をする場合は、遺産分割協議書を作る必要はありません。

2 相続財産が預貯金のみの場合は作らなくても手続きができる場合がある

 相続財産が預貯金の場合、多くの金融機関では預貯金の解約・払戻しをするために代表相続人を決め、専用の用紙への署名・押印等を行えば、預貯金の解約・払戻しができるところもあります。

 ただ、この場合、遺産分割協議書がありませんので、誰がいくらの預貯金をもらうべきであった、法定相続分と異なる分け方になっている、寄与分が考慮されていないなど、後から紛争のリスクを負うことになるケースもあります。

3 不動産がある場合は手続きができない

 相続財産に不動産がある場合、法務局で相続登記をすることになります。

 この場合、法務局から遺産分割協議書または遺言書の提出を求められますので、遺言書がない場合に遺産分割協議書を作成していなければ、手続きを進められないことになってしまいます。

 これまでは、相続登記をしないまま放置する方もいらっしゃいましたが、令和6年4月1日以降は、相続登記をしないまま放置することに対して、罰則が設けられましたので、遺産分割協議書を作成し、相続登記を進める必要があります。

4 相続税申告をすることができない

 相続税申告をする際にも、原則として、税務署には遺産分割協議書または遺言書を提出する必要があります。

 そのため、遺言書がなく遺産分割協議書を作成していなければ、相続税申告をすることができなくなってしまいます。

 相続税申告は、亡くなった日の翌日から10か月以内に行う必要がありますので、速やかに遺産分割協議書の作成に入らなければ、申告期限を徒過してしまいかねません。

 申告期限を過ぎてしまうと、延滞税等のペナルティ税が課せられてしまいますので、遺産分割協議書はできるだけ早めに作成されることをおすすめします。

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