遺産分割協議書作成時の注意点

文責:弁護士・税理士 小島 隆太郎

最終更新日:2023年10月13日

1 金融機関で手続きができるか

 遺産分割協議書を作成した後は、その遺産分割協議書を用いて、金融機関で被相続人の預貯金等の解約・払い戻し手続きを行うことになります。

 その際に、金融機関では受付けられない遺産分割協議書になってしまっていると、書き直したり作成し直したりしなければならず、手続きを進めるために余計な手間がかかってしまいます。

 例えば、相続人のうち、一部の者の署名・押印が欠けるような遺産分割協議書を作成してしまうと、手続きは進められません。

2 法務局で手続きができるか

 相続財産の中に不動産がある場合、法務局で被相続人名義の不動産を相続人に変更するための移転登記手続きを行うことになります。

 その際に、法務局では受付けられない遺産分割協議書になってしまっていると、手続きを進めるために、再度、遺産分割協議書を作成し直し、相続人全員の署名・押印をもらわなければならなくなってしまいます。

 例えば、対象となる不動産がどれか明確に書かれていないと、法務局で不動産の特定性を欠く遺産分割協議書であると判断されてしまい、移転登記手続きを進めることができなくなってしまいます。

3 相続税のことも考慮されているか

 遺産分割協議書を作成すると、相続人間の権利関係が定まりますので、相続税申告をすることになります。

 誰がどの財産を取得するかによって、相続税の負担が変わることがあるため、相続税についても考慮しておくとよいです。

 また、相続税のことはもちろんですが、所得税等の税金のことまで考慮されて作成しているかどうかもポイントになります。

 例えば、購入当時100万円だったA株式及び購入当時200万円だったB株式が相続財産として存在していたとします。

 両方とも、被相続人が亡くなったときの価値は、150万円だった場合、どちらを相続する方が得になるでしょうか。

 税金を考慮すると、実は、B株式の方が得になります。

 これは、株式を売却した場合、売却時の価額から購入当時の価額を差引いた値上がり部分に対して、所得税が課税されるからです。

 つまり、A株式の場合は、150万円―100万円で50万円の値上がり部分に課税されるのに対し、B株式の場合は、150万円―200万円=―50万円となり、値上がりがないため所得税は課税されないということになります。

 このように、税金のことまでも考慮して遺産分割協議書を作成できているかどうかによって、相続後の手残り金額が変わってしまうことがありえます。

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